ヨーゼフのお役立ちコラム

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老いと相続について

マリヤ・クリニック・ニュース
2026.2. No.369

寒さが最も厳しい季節です。毎年書いていますが、郷里の前橋の砂嵐の空っ風に比べれば、千葉はなんと温暖な場所でしょうか。老後は温暖な場所に暮らすのが大事ですね。大学で横浜に出て、冬の喘息がなくなり、地域差が健康にもたらす影響に驚きました。

今年も孫が受験しますが、大学入試共通テストは毎年寒い日になります。私たちの頃は、2月に私立、3月初めに国立の一期校、後半に二期校の受験日で、全て一発でした。一期校に間違いないと思っていたのに、風邪で熱が出て落とし、滑り止めに入りました。それで学部は違うけれど妻と同じ大学になり、妻は「神様の導きね。」と笑っています。

最も寒い時に選挙をやるというのには驚きました。党利党略とは、政党が国全体の利益よりも、自分たちの組織や陣営の利益を優先して行動することを指します。雪の多い寒い地方投票率を落とそうとしているのでしょうか。人気があると言っても、それでは却って人気を落とすような気がするのですが。

心筋梗塞で冠動脈2本が詰まり、1本にステントを入れて生きながらえた人に、「健康管理をきちんとして」と伝えたら、「自分は医者の言うことを守り、きちんと健康管理している。」と怒られました。心筋梗塞は生活習慣病であり、健康管理をきちんとしていたら、あまりならないものですが、自己意識は複雑なものです。

嚥下機能が衰え、ムース食になった兄に、「口の中にあまり入れないで、ゆっくり噛んで」と言うと、うなずきながら口に入れ続け、あまり噛まないで飲み込みます。分かっているのでしょうが、もう癖になっているので、今更治せないようです。施設では吸引器を買ったのですが、週に一度引き取る時には、誤嚥したらどうしようもありません。口うるさく注意するのは嫌なので、見守っているだけです。

思い通りにならない自他、そして社会を、受け入れながら穏やかに過ごすことは、かなり難しいと思いながら、それこそ信仰の境地だと思いました。未熟な私には当然無理だと思いながら、これを心掛けることが楽しみになってきました。

事務長 柏崎久雄

 昨年3月、義姉が80歳で亡くなりました。彼女は熱心なキリスト教信者で長年、私たちを支えてくれました。東北の生まれで、頑固で一途でしたが、その分しっかりとした生活をしていました。その夫はおうような人で、妻のきちんとした性分を理解していました。彼女は仕事でも、筋を通す人で頼りがいがあり、多くの人から信頼され、友人も多くおりました。

 ところが、75歳を超えた頃から身体が弱り始め、それを気にするようになりました。まず、眠れなくなりました。若い時から健康で薬も要らない彼女にとって、眠れないことは大きなショックで、軽い入眠剤を摂り始めました。そのうち、他にも少しずつ加齢による兆候が現れ始めました。彼女は負けん気も強いので、散歩やランニングを増やして身体を強化しようとしました。

 血液検査では、タンパク質と亜鉛が不足していると伝えるけれども、十分食べている、栄養は摂っているという返事でした。真面目で頑固なので、弱みを見せたくないのでしょう。高齢者は若い頃と同じように食べても、消化吸収力が衰えるので、1.5倍は食べなければなりません。しかし、消化吸収力が衰えるということは、「食べられなくなる」ということでもあります。また、脂分が食べたくなくなり、消化の良い炭水化物系のものを食べるようになります。そして、顔の艶がなくなり、皮膚がカサカサしてきます。肉を食べるように伝えると、やはり食べていると言います。どうも、鶏肉が多く、サラダチキンを摂っているようでした。鶏のささみ肉は、タンパク質が多く、脂質も少ないので、ダイエットのためだけでなく高齢者にも好まれます。しかし、気になることは、亜鉛や鉄分そして脂肪酸も少ないことです。

 そして、彼女は勉強熱心で、自分で必要な食べ物や運動などをよく調べていました。

 高齢者向けの栄養摂取や健康づくりの資料が不足しています。高齢者は、栄養の消化吸収力が衰え、また細胞の再生能力も衰え、必要な栄養素が多くなっているのにも関わらず、若い人の健康づくりの情報をそのまま採用しています。今月のニュースを書きながら、このテーマで新しく本を出版してみようかと思ったほどです。

 彼女は、健康が衰えるほどに健康づくりに集中して、却って身体を消耗させていきました。毎日、時間をみては歩き、殆ど2時間は歩き回っていました。しかし、頑張れば頑張るほど、体力は衰え、タンパク質を含めた栄養不足は深刻になっていきました。でも、生まれながらの気力と根性で、必要と思われるものを食し、歩き回っていました。実際には、筋肉が付いていないので、血糖値の保持ができず、夜は眠れず、眠っても起きてしまうのでした。そして、急激に体力が衰えていきました。明らかに痩せてきているのに、それを身体が締まったと誤解していたのです。また、きちんとした生活を保っていたので、おやつを摂ったり、休息をすることが不得手だったようです。認知症の症状も顕著になり、マリヤ・クリニックの診察後、2階でウロウロして診察費を払う場所を探していました。

 『新・栄養医学ガイドブック』にも書いたように、筋肉は重要なエネルギー倉庫であり供給源です。ところが、食べる量(補給)が少ないのに、運動(歩き回るなど)を増やすと、消費する量の方が多くなって痩せてしまうのです。最近も、ランニングが好きで毎日走り回っている50歳の壮年が疲れやすくなっており、頭が回らなくなっているので、そのアルブミン(血中タンパク質)と血中亜鉛の値を調べたところ、かなり低値でした。「肉を食べている。」というので確認したところ、彼の「食べている」という量は、かなり少ないことがわかりました。

 多くの方が昔の高校野球のような根性論を保持して体力づくりをしています。痩せて肌艶の悪い人が、必死にランニングをしているのを見ると、危険だなと思います。大谷選手が運動前に1ガロン(3.8ℓ)のアミノ酸飲料を飲んでいたり、一日16個の卵を食べていたり、最低10時間の睡眠を確保するということは体力づくりと健康維持に必要で合理的です。運動をしない普通の人がそんなことをしていたら無理がありますが、その人に合った健康づくりをしないといけません。

 高齢者が若い人やスポーツマンの体力づくりの資料を真似て無理をし、身体を壊すということはよくあります。高齢者が身体を壊すと、回復が難しく、体力も落ちて、QOL(生活の質)が落ちてしまいます。更に、その結果、認知症になってしまったりするのですが、そうすると、他の人の意見や情報を取り入れられなくなり、頑張ろうとしたり、落ち込んだりしたりするのです。高齢者でなくても、上述のように根性論を捨てきれない人が健康になろうとして却って身体を壊してしまうのです。高齢者は以下のことを参考にしていただければと願います。

  • 1.良質かつ消化の良いタンパク質や亜鉛を多めに摂る。

     痩せていたり、筋肉が少なかったり、運動を続けているならば、頻回に摂って更に増やします。タンパク質の消化吸収には、消化酵素が必要で、消化酵素の材料にはタンパク質が必要です。細胞の再生や素材にもなり、免疫力にも大きく寄与します。亜鉛は、皮膚や粘膜の形成、傷の修復や細胞分裂、タンパク合成に必要です。

  • 2.激しい運動、30分以上の運動はしない。十分休み、栄養を摂ってから再開することは良い。

     運動すれば筋肉が付くと思うのは誤解です。運動エネルギーの補給は難しく、高齢者は無理をすると身体を損なってしまいます。筋肉の少ない人は、休みと栄養補給を増やすことが必要です。運動は血糖値が下がりやすい食後3時間前に切り上げることも大切です。寒い日の外出は、温かい物を摂ってからにすると良いでしょう。

  • 3.よく横になり、身体を休め、血液の循環を促す。

     高齢になるとエネルギーの補給が悪くなります。食事をするだけで胃の働きにエネルギーを消耗して疲れます。食後休まないと胃の活動に支障が来て、消化力も衰えます。節約の為にお風呂も入らない人もおりますが、高齢者がお風呂にゆっくり入らないと、身体が冷えたままになり、血液の循環も滞って体調を悪くしていきます。

  • 4.睡眠を十分とる。

     睡眠は、損傷した細胞の補修や筋肉の回復をもたらし、疲労回復に必要です。脳の休息にもなり、老廃物を排出します。免疫力向上、ストレス軽減、ホルモンの調整など、多くの働きは睡眠時に行われます。

     眠れないという高齢者も多いのですが、睡眠前にホットミルクや消化の良いものを摂って血糖値が低くならないように心がけると良いです。睡眠時間は少なくて良いという人もおりますが、それでは脳の働きに支障がでます。ところが、眠らなければならないとストレスを持つ人も多くおります。また、眠っているのに眠れてないと思う人もおります。横になっていれば、ある程度疲れは取れます。そして翌日には眠れます。眠れないことをストレスとしないほうが良いかもしれません。

  • 5.あまり几帳面にならず、気楽に明るく過ごす。

     若い時の基準で自分のありようと生活を考えると、真面目で几帳面な人は悲観的に考えてしまうかもしれません。それは当然ですが、ある人はそれを我慢できず、改善しようと考えます。体力的にも、能力的にも、無理だと考え諦めることができず、不満を持ちイライラしてしまうのです。そうして性格が悪くなり、周囲に対して批判的になっていくのです。自分の老いと弱くなったことを認め、助けを求めることが大事です。明るく過ごす高齢者の周りには人々が集まり、楽しくなってきます。

  • 6.健康の基準にこだわらず、禁欲的にならない。

     コレステロールは脳に必要で、脂肪もエネルギー源として必要です。肥満を気にする人が多くおりますが、加齢により自然と脂肪は取れてきます。痩せようとすることは高齢者には危険です。高齢者はエネルギーの蓄えが少ないので、血糖値を高めようとして甘い物を食べたがります。食べ過ぎは止めたほうが良いのですが、おやつに少しくらい食べるのは悪くはありません。

  • 7.甘味料、保存料、発色剤など自然のものではない食品添加物の入ってないものを選ぶ。

     高齢者は新陳代謝が衰えており、毒素や不純物を排出することがあまりできず、少量でも敏感に体調・体質を悪くします。刺激の強い調味料やカフェインなども控えたほうが良いでしょう。パン食にする高齢者が多いですが、グルテンはアレルギーを起こすこともあり、腸にはあまりよくありません。多くのパンに含まれているマーガリンやショートニングはトランス脂肪酸が含まれており、心臓に悪いので、欧米では使用が制限されています。菓子パンは砂糖が多く使用されているため、食べてはいけません。

     ハムやソーセージに含まれている発色剤の亜硝酸ナトリウムも発がん性があります。調理が面倒くさくなる高齢者は多く、冷凍食品やインスタントラーメン、出来合いのお弁当、などを食べることが多くなっています。シミやシワは身体が酸化しているからできるので、ビタミンCやEなどの抗酸化ビタミンが必要です。

 残された兄は介護施設に入っています。自由に外出でき、日曜日には教会員が送迎して礼拝に参加しています。訪問もいつでもできるし、一人部屋9室に昼は4人ほど看護師・介護士を含めたスタッフがおり、世話を丁寧にしてくれます。ここを探し出すには3か月ほど掛かり、それまでは短期入所施設に入っていましたが、公設の紹介事務所がよく動いてくれました。安易に決めると後で苦労します。

 おむつ、介護用品などは連絡されたら、私がネットで注文し配送してもらいます。現在は嚥下機能も落ちているのでムース食などを摂っています。日曜は、妻がおじやを作り、ヨーグルトなどと一緒に提供しています。

 ただ、そこに義姉が入っただろうかというと難しかったと思います。人の世話になるのが嫌いで、自分の考えや生き方を保つ人なので、男性スタッフに世話になることは拒んだでしょう。そうならないために必死に健康づくりに励み、却って身体をこじらせてあっという間に天国に迎え入れられました。兄も私も、一時は落胆しましたが、落ち着いてみると丁度良い時に神様は迎えてくれたのだと捉えています。

 相続手続きは大変困難で、いまだに完了していません。遠方に兄妹4人がいるので、それぞれに謄本や相続放棄の手続きをしてもらいました。良い兄妹なので、もめることはなかったのですが、高齢になっていて時間がかかりました。教会員に行政書士がいるので、煩雑な手続きをしてくださって、とても助かりました。それらが済んだのが9か月後の12月で、それらを持って郵便局に4度行き、時間を掛けて説明と確認を受け、どうにか書類を送ったのが1月に入ってからで、まだ済んでいません。原本を見せなければならないので、他の銀行はこれからです。

 兄はパーキンソン病で文字が書けなくなっており、手続きのための委任状を署名するのに苦労しました。医療費、介護費、介護用品、服や生活用品の購入、役所や施設の手続きなど多くの世話が必要で、私がいなかったらどうなったのかと思ったものです。

 兄も義姉も将来のことを何もしておらず、私一人で対処してきました。考えてみれば、前もって準備などできるものではなく、細々としたことを残る家族がしなければなりません。老夫婦だけでは、途方に暮れただけで殆どできなかったでしょう。老いるということは、なかなか辛いものです。自分の子どもに頼めるかというと、仕事もあり、家族もあり、現役世代に任せるのも難しい気がします。

 遺品の整理処分は、教会員がかなり手伝ってくれました。本も多くあり、記念に残るものも多かったのですが、勝手に判断して処理しました。こういう時に、相談したり、意見を言われたりすると困るものです。公団住宅の退去も、掃除や手続きで手間が要りました。人が死ぬということは、残る人にとって大変なことです。私にとっては、忙しく働いたことが、義姉への恩返しになったかと思いました。

 ようやく、片付いてきて、これらを書き記すことが他の人の参考になると思い、書いてみました。感想としては、私のようにきちんと始末していける人は少ないと思われます。しかし、天国に行った人にとっては、どうでも良いことです。死ぬときは死ぬ。認知症になることも、却って幸いで、思い煩わずに、老いを楽しんでいったほうが良いと思われます。残った人も、できることをして、できなければ御免なさいでしょうがないと思います。

執筆者の紹介

かしわざき事務長

柏崎 久雄

・株式会社ヨーゼフ 代表取締役社長

・マリヤ・クリニック 事務長

・千葉福音キリスト教会 牧師

妻(マリヤ・クリニック院長)が低血糖症なのをきっかけに、分子整合栄養医学を勉強し、2004年にサプリメント会社を設立

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