栄養医学とカゼインフリー
栄養医学では、身体が必要としている栄養素をしっかり摂るのと同時に、身体に負担となるものを摂らないことも大切なポイントとなります。カゼインフリー(カゼイン不使用食)もこの一環として、身体の負担を減らす重要な要素として近年注目されているのです。
栄養医学では、身体が必要としている栄養素をしっかり摂るのと同時に、身体に負担となるものを摂らないことも大切なポイントとなります。カゼインフリー(カゼイン不使用食)もこの一環として、身体の負担を減らす重要な要素として近年注目されているのです。
栄養医学とは、遺伝子に組み込まれているその人本来の健康な状態を、必要な栄養素をしっかり補給することによって自らの力(自然治癒力)で回復させ、病気を治療していく積極的な治療法です。
ノーベル賞を受賞したライナス・ポーリング博士によって提唱され、アメリカやカナダでは「分子整合栄養医学」と言われています。
カゼインとは、牛乳中に最も多く含まれるタンパク質です。カゼインは酸で固まるという性質があるため、これを利用してヨーグルトやチーズといった乳製品が作られており、牛乳・乳製品を摂る方には切り離せないタンパク質なのです。ところが、このカゼインが身体に合わず、様々な不調につながってしまう人が多いことが分かってきており、カゼインを使わない食品(カゼインフリー)が近年注目されています。
【アレルギーが多い】
現在日本で乳幼児の食物アレルギーの原因として、鶏卵に続いて2番目に多いのが牛乳・乳製品。牛乳アレルギーの多くは、牛乳タンパクの中のカゼインが原因と言われています。
カゼインには耐熱性があり、加熱してもタンパク質の構造はほとんど変化しないことから、調理してもアレルギーの起こりやすさが変わらないのも特徴の一つです。摂取してから数時間~数日経って身体に影響が現れる遅発型アレルギーでも、牛乳やカゼインは高い反応が出やすい食品です。
【ペプチドの影響】
発達障害の栄養療法では、食べ物が身体に与える影響、特に遅発型アレルギーやペプチドにも着目しています。
ペプチドとはタンパク質が分解されてアミノ酸になる途中段階のもので、消化の段階としては未消化の物質です。腸から吸収されるのはアミノ酸まで分解されてからになるので、ペプチドの状態はまだ吸収できる大きさではありません。リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)など、腸が荒れているとペプチドの状態でも腸から吸収されることがあります。
カゼインから生じるペプチドであるカソモルフィンという物質は腸から吸収され血液に乗って脳内へ運ばれると、ヘロインやモルヒネといった麻薬が反応する鎮静受容体に同じように反応してしまいます。すると、脳全体を穏やかにするGABAといったホルモンの働きを抑制し、脳の興奮につながるドーパミンといったホルモンの過剰分泌を促すことが分かっています。
また、発達障害の子は下痢や便秘などお腹のトラブルを持つ子が多く、タンパク質を分解する消化力が弱かったり、腸内に悪玉菌や真菌(カビの仲間)が増えることで腸内が傷つきやすかったりする状況が多く見られます。すると、最後まで消化しきれなかったタンパク質(ペプチド)が腸の傷ついた箇所から吸収されやすく、心身に悪影響を及ぼすことに繋がるのです。
気になる症状があり乳製品をよく摂っている場合、一定期間完全に除去してみて変化があるか、試してみる価値は大いにあるのではないでしょうか。
牛乳を摂るメリットといえば、カルシウムやタンパク質の優れた補給源となることでしょう。また、牛乳からはバター、ヨーグルト、チーズ、生クリームなどの様々な乳製品が作られ、洋食や洋菓子の材料にも欠かせません。
牛乳や乳製品は今や私たちにとってすっかり身近なものですが、実は日本人にとってはまだ歴史が浅い食品でもあるのです。日本では飛鳥・奈良時代から天皇や皇族などの限られた一部の人が牛乳を口にし始めたとされていますが、国民の間で牛乳を飲むことが一般的になったのは、1871年に「天皇が毎日2回ずつ牛乳を飲む」という記事が新聞・雑誌に載ってからだと言われています。ずっと昔から食べられてきた米や大豆と比べ、牛乳を飲むという習慣は日本人にとってはまだまだ歴史が浅いのです。
実際に、乳糖不耐症やアレルギーにより身体に合わない人も珍しくなく、近年ではカゼインの身体への影響も注目されていることから、代替品の需要が年々高まっています。
日本の学校給食における牛乳の歴史を見てみると、昭和22年頃から全国的に脱脂粉乳の給食が始まり、昭和33年頃から牛乳に置き換わるようになっていきました。現在でも子供の成長期に欠かせないカルシウムやタンパク質の補給のために多くの学校給食で飲用牛乳が出ています。特にカルシウムはもともと日本人にとって不足しやすいミネラルですから、牛乳・乳製品はその優れた補給源となっているのです。そのため、除去する場合にはカルシウム不足に注意が必要です。戦後、日本人の身長が飛躍的に伸びたのは、牛乳とその成分であるカルシウムが大きく関わっていると考えられています。
骨ごと食べられる魚はとても優秀なカルシウムの補給源になります。小魚や小エビなど丸ごと食べられるものも良いですし、魚の水煮缶は骨ごと食べられるものも多いため、積極的に活用できると良いですね。魚はタンパク質や良質の脂質であるEPA・DHAも含むことからとても優秀な食品です。また、植物性食品の中では大豆製品も比較的カルシウムが多く含まれています。お豆腐や納豆だけでなく、牛乳の代替品としても使いやすい豆乳の他、お肉のように使える大豆ミートなど新しいものもどんどん増えています。
胃酸はカルシウムや鉄などのミネラルの吸収に関わっています。グルメ番組を見た時や美味しそうな香りが漂ってきたときに、唾液がじゅわーっと染み出てきませんか?そんな時は胃酸分泌の準備が整っています。また、食事の美味しさを味わいながらよく噛んで食べることは胃酸をどんどん分泌させるので、それだけでカルシウムは吸収しやすくなるのです。食事を楽しむことは、カルシウムやタンパク質を始め、栄養素の吸収力が格段と上がることを知ってほしいです。
ビタミンDはカルシウムの吸収率を高めます。サーモンやサンマなどのお魚に多い成分ですが、日光に当たることで体内合成される成分でもあります。
酸っぱいものを食べると唾液が出るので、サーモンのマリネ、梅干しを刻んでマヨネーズと鰹節を混ぜたものとサーモンを和えるなどの料理と、カルシウムが比較的多い豆腐料理を合わせれば、カゼインフリーのカルシウム対策としてはばっちりです。酢の物や柑橘類も上手に使いたいですね。
■豆乳
大豆から作られ、豆腐の原料にもなります。日本で一番ポピュラーな植物性ミルクとも言えるでしょう。牛乳に匹敵するほどタンパク質が多く、大豆イソフラボンやレシチン、ミネラルなど栄養価が高いのも特徴です。
■ライスミルク
お米から作られるミルクです。お米は日本人にとって最も馴染みの深い穀物ですが、主食としてだけでなく近年植物性ミルクとしても注目されています。炭水化物が主成分ですが、自然な甘みがあり消化吸収が良く胃腸に優しいのが特徴です。
■アーモンドミルク
アーモンドを原料に作られるミルクです。香ばしい香りが特徴で、タンパク質は少ないものの低糖質・低カロリーで抗酸化作用の強いビタミンEを豊富に含んでいます。アメリカでは植物性ミルクの中でシェア60%以上と断トツの人気を誇っています。
■ココナッツミルク
成熟したココナッツの種子の固形胚乳から作られます。脂質が多く濃厚で甘い香りが特徴ですが、ココナッツミルクの脂質に多く含まれる中鎖脂肪酸は一般的な脂質よりも短時間でエネルギーに変わりやすく、近年注目されている脂肪酸です。
■オーツミルク
オートミールやグラノーラの原料にもなるオーツ麦(えん麦)という雑穀から作られるミルクです。スッキリとした甘みの中にもコクがあり、食物繊維が多いのが特徴です。欧州では植物性ミルクの中で最もシェアが高く、世界的にも急速に注目度が上がっています。
植物性の食品を選ぶときに注意したいのが農薬。植物性ミルクの原料に多く使われる胚という部分は農薬の有害物質をため込みやすいことから、オーガニックや有機栽培の製品を選ぶことは成長期の子供だけでなく化学物質に敏感な大人にもお勧めです。また、栄養価や飲みやすさだけでなく、常温保存が可能で賞味期限が長いことも植物性ミルクのメリット。牛乳の代わりとしてだけでなく食事を豊かにする新しい可能性を秘めた植物性ミルク、一度試してみてはいかがでしょうか。
ヨーゼフにもオーガニックのカゼインフリーミルクを多数取り揃えております!ぜひ色々と試してみてくださいね。
私たちの身体は日々食べたものから作られています。自分の身体が何を必要としているのかを考えてみるのと同時に、摂ると負担になってしまうものがないかを知ることはとても大切なことです。身体に負担となっているものがあったら、我慢するだけでなく、替わりの新しい食品を見つけることで、今よりもっと豊かで健康な食生活を目指していきましょう。
管理栄養士:さっちー
マリヤ・クリニックの管理栄養士。
二児のママで長男は乳アレルギー持ち。
子供が喜ぶ美味しい食事を目指して日々奮闘中!